あの人の物語〜がん終末期と植物療法 vol.2

ストーリー Vol.2  自分を好きになること

2回目の訪問

先週の施術から1週間、彼女の病状は大きな変わりはないものの、

痛みは少しずつ強くなってきているという。

 

 

しかし、痛み止めを使いすぎると眠っている時間が増えてしまうからと

彼女自身、痛み止めの使用を抑えていると担当看護師さんからの情報だった。

 

今日は、どんな様子なのかな、笑顔でいてくれるといいのだけど・・・

不安と期待を胸に担当訪問看護師さんと、ご自宅に向かった。

 

「今日は痛みはないです。前回より調子いいと思います!」

 

「ただ、吐き気のような気持ち悪さが少しあるから、食事もとれなくて・・・」

 

笑顔の中に、不安の影が見てとれた。

両足の状態は、前回よりも皮膚全体が柔らかく、開いていた毛穴も収縮しており、いい状態。

両足リンパ浮腫へのアプローチは、前回同様、ゼラニウムとした。

吐き気の軽減には柑橘系。

胸元に、スイート・オレンジとグレープフルーツのオイルを含んだコットンを置く

*スイート・オレンジの効能
ストレスや不安などの神経の緊張を緩和し、気分を明るくし、消化促進

*グレープフルーツの効能
気持ちを明るくリフレッシュし、消化促進、吐き気の緩和

 

今日は彼女の担当理学療法士さんも一緒。

 

「私、手が空いているので、お母様の手のケアをやってみます!」と理学療法士さん。

ベッドサイドでお母様のハンドケアを理学療法士さんがおこない、

「頭も洗ってほしい!」という彼女の希望で、訪問看護師さんが寝たまま洗髪をおこなう

「とっても気持ちがいい・・・ 頭も、お腹も、足も・・・とっても贅沢な気分です・・・」

 

彼女の心からリラックスした様子にハンドケアをうけているお母様も

「私も! とっても極楽だわ~」と笑顔でこたえる。

 

親子で高級スパ!最高ですね!と私

 

 

「私、ずっと、こういうのに憧れていたんです!夢にみたい!うれしいです!」

彼女のコンディションも良く、笑いと香りに包まれた空間。

 

 

そんなとき、担当看護師さんがつぶやいた。

「○○さん、本当にお綺麗ですね。ステキです」

 

「いえ、私、自分のこと、嫌いなんです!すごくイヤ!」

 

「自分のこと、一度も好きだと思ったことないんです・・・」

 

一瞬、ドキッとしたが、彼女の心の奥にある本音に触れた気がした

Forest styleの理念のひとつに 『ありのままに生きる幸せ』というのがある。

 

自分への戒め、反省も含めて、自分を愛することの大切さ。

自分で自分を大事にし、満たすことで、人は前に進むことができると考えている。

 

その場は、冗談を交えながら、私、きれいでしょ!と言うほうが嫌味ですよねと返す。

 

これまで、自分自身のコンプレックス、自分でも許せない不調に悩む方

表面にあらわれる症状や身体的変化、それによって周囲からの目に苦しむ方を

たくさんみてきた。

両足の強いむくみと皮膚の変調の患者さんから

「これを見て!私のこんな醜いところ、あなた触れることできる?不幸って思うでしょ?」

と強い口調で詰め寄られたことがあった。

 

 

他者への挑戦的な言葉は、自分が許せない気持ちと、怒りと悲しみが込められていた。

 

その方の足に触れると、涙を流していた。

「あなたが許せないなら、私が触れるから、大丈夫」と気持ちをこめていく

 

回数を重ねるごとに、少しづつ笑顔が増えて、その方は元気を取り戻した

ありのままの自分を受け止めることは、とても難しいものだ

 

がん終末期の方には、時間が限られている

 

残された時間の中で、自分を好きになってほしいと思うのは、私の傲慢かもしれない

 

しかし、少しでも、彼女が『今』を生きている実感と自分を大切に思える時間が持てるように、私に出来ることで彼女を癒していこう

「あー終わっちゃった、こんな時間がずっと続けばいいなーって、

いつも、母と言ってるんです!私、来週まで頑張るので、予約お願いします!」

朗らかな笑顔の彼女とハイタッチ!

 

また、来週と約束をして・・・